転換期のレストラン

レストランが担う役割、レストランというシステム・構造が変わったんだなぁとデンマークのnomaの映画「ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た」(原題:Ants on a Shrimp)を見ていて思いました。あるいは周縁が多義性をはらみ活性化の契機となる好例でもあり。

まとまったカタチとしてのnomaの映像としては世界のベストレストランで1位を取る前のBBCだったかによる映像、「ノーマ、世界を変える料理」(原題:Noma My Perfect Storm)に続いて今回で3回目。食べに行ったことが無いので偉そうなことは言えませんが。今回の映画はレネ・レゼピをリーダーとするチームnomaの映画と考えたほうがいいかと思います。

nomaの映像を見たり、本を読んでいるとあきらかに背景にあるロジックが異なるなと思う時があります。初期とレネ・レゼピの店になってからでもかなり違いますが。なによりもまず未分化な原生林を連想し、レヴィ=ストロースのいうブリコラージュが一番近いのかもと思います。狩猟採集民の行動様式に似たものがあり、ひとつひとつの料理ではなくその料理を生みだす構造が通常のレストランのフォーマットとあきらかに違います。別の文脈を掘り起こそうとしているかのようで

ノーマ東京の場合、どうしても最初の一皿の蟻に注目が行きますが、飲食業界の重鎮となったクラウス・マイヤーがプロジェクトとして構想したnomaの2003年のオープンに際し、若干25歳のレネ・レゼピを抜擢した時からムーブメントのなかのひとつの強度として常に存在し続けているnomaとその周辺を知るとその目指す地平がもっと理解できるかと思います。自国デンマークの食文化のありかたを憂慮したクラウス・マイヤーは活動のなかでnomaのレネ・レゼピを含むシェフたちと新しい北欧料理のためのマニフェストとして10項目にまとめました。
このマニフェストをヌーヴェルキュイジーヌの10ヶ条と比べると現代におけるレストランの使命と役割が変化したことがよくわかります。料理のことだけを考えていればよかった時代と食を取り巻く社会のシステムをも憂慮せざるを得ない時代とでは取り組み方もゴールも異なるのは自明の理で。このあたりはNYのブルーヒルのダン・バーバーの試みとパラレルです。その活動は自分たちは何を食べているのか、それを食べることはどういう意味なのかをゲストに問いかけます。

クラウス・マイヤーが以前インタビューで新北欧料理が北欧という地域にのみ関係する試みでないことを証明したいと答えていましたが、くしくも今回のnoma東京、そしてオーストラリア、来年のメキシコはまさにそのことに対するチャレンジです。それが成功しているか企画倒れに終わるのかはそれを受けての次の世代が引き受けるべき課題なのだと思っています。すでにnoma出身のシェフが活躍する時代になっています。これからのレストランの役割と使命についてまだまだ考えることは多いです。

『ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た』の説明としては以下のサイトが簡潔かつ的確にまとめているかと思います。
CREATORS PARK:12/10公開『ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た』

参考として
【ヌーヴェルキュイジーヌの10の形式】
・過度な複雑化の排除
・魚介類、狩猟鳥、子牛肉、野菜、パテの調理時間は自然の味を残すために短く。蒸し料・理が多いのが特徴である
・なるべく新鮮な素材を使う
・大げさなメニューはより簡素なメニューに変更
・肉や鳥に使う味の濃いマリネの廃止
・味付けのために、ハーブ、バター、レモン汁やお酢と共に、味の濃いソース(例えば、・エスパニョールソースやベシャメルソース、小麦粉ベースのルー など)の使用の廃止
・郷土料理の利用
・新しい技術や器具の利用、ポキューズは電子レンジすらも利用した
・お客の食のニーズに敏感であること
・独創的な組み合わせなどを作ること
— ヌーベルキュイジーヌの10の形式【Wikipedia】

クラウス・マイヤー インタビュー(Elle Online)
http://www.elle.co.jp/atable/pick/trendinsight_16_0102

【新しい北欧料理のためのマニフェスト】
http://drive.media/posts/10740 より引用
1.地域を思い起こさせるような純粋さ、新鮮さ、シンプルさ、そして倫理観を表現する
2.季節の移り変わりを食に反映する
3.地域の気候、土地、そして水が生み出す素材を基礎にする
4.健康に暮らすための知見と美味しさを両立する
5.多様な北欧の生産者とその根底にある文化を広める
6.動物への配慮や海、農地、土地における健全な生産を広める
7.伝統的な北欧料理の新たな可能性を追求する
8.外国からの刺激と、北欧料理の伝統を両立する
9.地域の自給自足と高品質な生産物の共有を結びつける
10.料理人や農家、漁師、卸売小売業者、研究者、教師、政治家、行政の全てが北欧諸国の人々の利益に貢献する

NORDIC FOOD DIPLOMACY(英文)
http://www.nfd.nynordiskmad.org/index.php?id=507
1. To express the purity, freshness, simplicity and ethics we wish to associate with our region.
2. To reflect the changing of the seasons in the meals we make.
3. To base our cooking on ingredients and produce whose characteristics are particularly excellent in our climates, landscapes and waters.
4. To combine the demand for good taste with modern knowledge of health and well-being.
5. To promote Nordic products and the variety of Nordic producers – and to spread the word about their underlying cultures.
6. To promote animal welfare and a sound production process in our seas, on our farmland and in the wild.
7. To develop potentially new applications of traditional Nordic food products.
8. To combine the best in Nordic cookery and culinary traditions with impulses from abroad.
9. To combine local self-sufficiency with regional sharing of high-quality products.
10. To join forces with consumer representatives, other cooking craftsmen, agriculture, the fishing, food , retail and wholesale industries, researchers, teachers, politicians and authorities on this project for the benefit and advantage of everyone in the Nordic countries.